ラ・ラ・ランドが面白くなかったのは天狼院書店のせいだ

ラ・ラ・ランドが面白くなかったのは天狼院書店のせいだ

正直に言うと、観る前からそんなに期待していなかった。
僕は基本的にラブストーリーが苦手だし、ミュージカルも嫌いではないが、セリフだけの映画の方が好きだ。
ミュージカル映画を観ると、「なぜわざわざミュージカルにするのだろう(普通にセリフでやってくれればいいのに……)」と思ってしまう。
でも、最近観たミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』がとても面白かったし、何と言っても『ラ・ラ・ランド』の評価はすこぶる高い。
「少なくとも面白くないってことはないだろう」
そう思って、ツタヤでDVDを借りた。

「うーん、ちょっと好みの映画じゃなかったな」
一緒に観ていた妻の機嫌を損ねないよう、かなり控えめにディスった。
本当は全然面白くなくて、途中から観るのもやめてしまったんだが、もしかしたら妻は面白いと思ったのかもしれない。
自分が面白いと感じているものを全面的に否定されると、誰でも人は不機嫌になる。
私も大好きなヘヴィメタルを目の前で否定されると、「蝋人形にしてやろうか」って思うし。
だから僕は映画を観ながら、妻のメンタルを傷つけることなく、正直な感想を伝えられる言葉を探していた。
それが、「好みの映画じゃなかった」という感想だ。

しかし、妻の返事は予想をはるかに超えるものだった。

「時間の無駄だったね……」

「!?」

なんと、「面白くなかった」とか「退屈だった」とかをはるかに超える、最上級の酷評。
妻が何かを悪く言うことはほとんどないので、「時間の無駄」と言い放つとは意外だった。
どうしてそう思ったのか聞いてみると、私と同じ理由だった。
主人公に共感できなかったのだ。

ラ・ラ・ランドの主人公は、ハリウッド女優を目指すミアと、ジャズピアニストを目指すセブの2人。
ミアはハリウッドにあるコーヒーショップで働きながらハリウッド女優を目指すも、オーディションに落ち続ける日々。
セブはジャズピアニストを目指すも、日銭を稼ぐために、バーやパーティ会場で万人受けする音楽を奏でていた。
そんな2人が出会い、大きな夢に向かって頑張るというヒーローズジャーニーであるが、どうしても主人公2人を応援する気になれない。
なんか、2人とも「人としてどうなの?」っていう行動が目立つのだ。

まず、ミアはコーヒーショップでの勤務態度がめちゃくちゃ悪い。
オーディションがあると言って突然帰ったり、コーヒーを運んでいる客とぶつかっても謝らないどころか被害者面したり。
彼氏がいるのにセブとダブルブッキングするし、映画上映中にスクリーンの前に立ちはだかるし、とにかく自己中心的なのだ。

セブについてはもっと最悪。
例えば、クリスマスに、レストランでピアノ演奏をするシーン。
オーナーからクリスマスソングを弾くように言われていたのに、クリスマス感が全くない自分自身の曲を弾いて、客をドン引きさせてしまう。
当然クビを宣告されるが、僕の器はおちょこぐらいしかないので、客を楽しませようとする気持ちがないピアニストを応援するなんてできない。

そして何より、2人とも「夢に向かって頑張っている感」を全く感じられなかった。
実際、演技やピアノの練習を頑張っている姿は少しも描かれていない。
だから主人公に全く共感できず、途中からはスマホをいじりながら惰性で観ていた。
しかし、ラ・ラ・ランドは本当につまらない映画なのだろうか。

話は変わるが、昨年末に『ボヘミアン・ラプソディ』を観に行った。
評判通り、とても感動する映画だった。
しかし、もしかすると、今観たら感動しないかもしれない……。
なぜなら僕は、天狼院書店のライティング・ゼミのせいで、映画に使われている「手法」を気にするようになってしまったからだ。

ボヘミアン・ラプソディも、インドからの移民でゲイというマイノリティの主人公がトップアーティストを目指す、「ヒーローズジャーニー」である。
映画館で観た時はフレディ・マーキュリーに感情移入し、涙を流すほど感動した。
しかし、見方を変えれば、フレディ・マーキュリーは非常に傲慢な男で、酒とドラッグとセックスにおぼれてバンドの輪を乱す身勝手な奴だ。
ラ・ラ・ランドのミアやセブとは比べ物にならないクズである。
そもそも、フレディ・マーキュリーは音楽的才能にあふれていたし、クイーンはとんとん拍子でトップに上り詰めたわけだから、凡人が努力してスターになるヒーローズジャーニーでもない。

あぁ、本当は僕だってこんなこと言いたくないし、考えたくもない。
素直に映画を楽しみたい。
でも、どうしても、「ストーリーがヒーローズジャーニーだな」とか、「ABCユニットはこうかな」とか、映画の「手法」を分析してしまう。
僕はツタヤでバイトしていたほど映画が大好きなのに、これから映画を観る度にこんなことを考えてしまうのだろうか……。
ラ・ラ・ランドだって、ミアのようなヒロインはアメリカ映画によく出てくるし、セブも見方に変えれば自分の音楽を貫く熱いピアニストだ。
手法を気にせずに素直な気持ちで観れば、きっと楽しめる映画だったのではないだろうか。
ラ・ラ・ランドが面白くなかったのはきっと、天狼院書店のせいだ。

ただ、天狼院書店のライティング・ゼミが、非常に満足度の高い講座であることは間違いない。
面白い映画や小説には、ライティング・ゼミで教わった手法が随所に散りばめられている。
逆に言うと、その手法が使われているから面白いのだろう。
つまり、ライティング・ゼミで教わる手法を使えば、誰でも面白い文章を書けるようになるということ。
私はライティング・ゼミを受け始めてちょうど2カ月だが、文章のレベルが格段に上がったと実感している。
もしあなたがこの文章を最後まで読んでくれたのなら、それは天狼院書店のおかげである。